バイデン大統領 一般教書演説 実績強調と中国めぐり結束訴える

アメリカのバイデン大統領は今後1年の施政方針を示す一般教書演説を行い、再選を目指して近く立候補を表明するのかが注目される中、雇用の創出など、これまでの実績を強調しました。また、中国をめぐっては「競争に勝つには団結すべきだ」と述べ、与野党の結束を訴えました。

アメリカのバイデン大統領は7日、連邦議会で今後1年の施政方針を示す一般教書演説を行いました。

この中でバイデン大統領は「1200万もの記録的な雇用を創出した」と述べて、みずからの政策で好調な経済を実現したと強調しました。

さらに、新型コロナウイルス対策などでも成果を上げたとして、来年の大統領選挙での再選を目指して、近く立候補を表明するのかが注目される中、この2年間の実績をアピールしました。

そして、去年の中間選挙で野党・共和党が下院を奪還したことを念頭に、政策の実現に向けて共和党に協力を呼びかけました。

また、最大の競合国と位置づける中国については「われわれが望んでいるのは競争であって衝突ではない。アメリカと世界の利益になる分野では中国と協力する」と述べました。

その一方で先週、アメリカ軍がアメリカ本土の上空を飛行した、中国の気球を撃墜したことを踏まえ「中国がわれわれの主権を脅かすなら国を守るために行動する」と強調し「競争に勝つには団結すべきだ」と述べ、与野党の結束を訴えました。

また、ロシアによる侵攻が続くウクライナをめぐっては「アメリカはウクライナを支援することで結束している。必要なかぎりウクライナに寄り添う」と述べて支援を継続していく姿勢を強調しました。

「アメリカ経済は好調」と強調

バイデン大統領は、失業率がおよそ50年ぶりの低水準になっていることや、この2年で過去最高となる1000万人が新たなビジネスの立ち上げを申請したことなどを挙げ、アメリカ経済は好調だと強調しました。

また、去年8月に成立させた半導体の国産化を進める法律によって今後、数十万人の雇用が生み出されるとアピールしました。

さらに、連邦政府のインフラのプロジェクトに使われる資材をすべてアメリカ製にすることを義務づけると発表し、今後、道路や橋などはアメリカ製品で建設されることになると述べました。

一方、アメリカ政府が借金できる金額が上限に達している問題をめぐっては、共和党に対し協力を呼びかけました。

この問題では、議会が上限の引き上げなどに応じなければ国債の債務不履行などにつながるおそれがありますが、財政規律を重視する共和党からは社会保障と医療保険の削減が必要だという声が出ています。

これに対しバイデン大統領は「社会保障と医療保険は何百万人もの高齢者の命綱だ」として、条件をつけずに上限の引き上げに応じるよう求めました。

「民主主義の制度への信頼回復を」

バイデン大統領は、おととしトランプ前大統領の支持者らが連邦議会に乱入した事件を挙げて「この数年、民主主義は脅かされ攻撃され、危険にさらされてきた」と述べました。

そのうえで「われわれは選挙結果を尊重し、民意を覆してはならない。法の支配を守り、民主主義の制度への信頼を回復しなければならず、憎しみや過激主義に居場所を与えてはならない」と強調しました。

そして、バイデン大統領はアメリカ社会の分断が指摘される中「民主主義は党派的な問題ではなく、国全体の問題でなければならない。われわれはお互いを敵としてではなく同じアメリカの仲間として見なければならない」と述べて、団結を呼びかけました。

また、バイデン大統領は、政権発足以降に超党派の支持で成立させた法律を挙げて「民主党と共和党は何度も団結した。共和党の友人たちよ、前議会で協力できたのだからこの議会でも協力し、合意を見いだすことができない理由はない」と述べて政策の実現に向けて議会下院で多数派を占める野党・共和党に協力を呼びかけました。

「必要なかぎり ウクライナに寄り添う」

バイデン大統領は、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアへの対応をめぐり、「アメリカはNATO=北大西洋条約機構を結束させて世界的な連合を築き上げ、プーチンの軍事侵攻に立ち向かった」と述べ、成果をアピールしました。

そのうえで「アメリカはウクライナを支援することで結束している。必要なかぎり、ウクライナに寄り添う」と述べ、野党・共和党が議会下院で多数派を占める中でもウクライナへの支援は超党派で続けていく姿勢を強調しました。

また、最大の競合国と位置づける中国をめぐっては「われわれが望んでいるのは競争であって衝突ではない」と述べたうえで、「アメリカと世界の利益になる分野では、中国と協力する」と述べました。

一方で、アメリカ軍が先週、アメリカ本土の上空を飛行した中国の気球を撃墜したことを踏まえ「もし、中国がわれわれの主権を脅かすなら、われわれは国を守るために行動する」と強調しました。

そのうえで「中国との競争に勝つには、われわれは全員、団結すべきだ」と述べ、与野党の結束を呼びかけました。

さらに、バイデン大統領は「同盟国は防衛費を増額し、より多くの役割を果たそうとしている。アメリカが太平洋と大西洋のパートナーの間に築いた懸け橋を見れば、アメリカに敵対することに賭けることがいかに間違っているか分かるだろう」と述べ、ロシアや中国などに対抗していくうえで同盟国や友好国との連携が強化されていると強調しました。

野党 共和党が反対演説「大統領や民主党は期待を裏切った」

バイデン大統領の一般教書演説に対し、野党・共和党はトランプ前政権でホワイトハウスの報道官を務め、その後、南部アーカンソー州の知事に就任した、サラ・サンダース氏がテレビなどを通じて反対演説を行いました。

この中でサンダース氏は、バイデン大統領が演説の中で経済が好調だとアピールしたことについて「バイデン大統領は、前政権から急回復していた経済と、もっとも安全な国境と、豊富な国産エネルギーなどを引き継いだにもかかわらず、この2年間ですべてをだめにしてしまった」と述べました。

さらにバイデン大統領の外交政策について「弱腰の姿勢は国や世界をリスクにさらす。もっともやっかいな敵対者である中国に立ち向かうことを拒否しているのは危険であり受け入れられない。彼は軍の最高司令官としてふさわしくない」と述べて強く批判しました。

そのうえでサンダース氏は「バイデン大統領や民主党は期待を裏切った。今こそ変革のときだ」と述べ、共和党こそがアメリカ国民の生活を向上させることができると訴えました。

中国 「競争を名目に中傷」と反発

アメリカのバイデン大統領が中国をめぐって、「われわれが望んでいるのは競争であって衝突ではない」と述べたことについて、中国外務省の毛寧報道官は8日の記者会見で、「競争を名目にほかの国を中傷したり、発展する正当な権利を制限したりすることや、全世界のサプライチェーンに損害を与えるのは、責任ある大国がすることではない」と反発しました。

そのうえで、「アメリカは客観的、かつ理性的な中国に対する認識を打ちたて、中国とともに両国関係を健全で安定した発展の軌道に戻すべきだ」と述べ、アメリカをけん制しました。

連邦議会周辺 厳重な警戒態勢

バイデン大統領が一般教書演説を行った連邦議会周辺は、議事堂を取り囲む形で高さ2.5メートルほどのフェンスが設置されるなど、厳重な警戒態勢がとられました。

おととし、トランプ前大統領の支持者らが連邦議会に乱入した事件を受けて、警察は警備に神経をとがらせていて、演説が行われる時間帯には周辺の一部の道路も閉鎖されました。

バイデン大統領 世論調査では厳しい声も

バイデン大統領が再選を目指して、近く立候補表明を行うのか注目されていますが、世論調査では厳しい声も聞かれます。

AP通信などが先月下旬に行った世論調査によりますと、民主党支持者のうち「バイデン大統領の立候補を望む」と答えた人は37%にとどまっています。

また、共和党支持者などを含む全体では「立候補を望む」と回答した人は22%となっています。

その理由について尋ねたところ、史上最高齢の大統領で現在80歳という年齢を懸念している人が多いということです。

また、ワシントン・ポストとABCテレビが、先月下旬から今月にかけて行った世論調査では、バイデン大統領が成し遂げた成果について「それほどない」と「ほとんどない」と答えたのは合わせて62%に上りました。

一方、「多くを成し遂げた」と「それなりに成し遂げた」と回答したのは36%にとどまっています。